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HOME > コラム『国際会計基準が我が国にやってくる!』~加賀屋純一のIFRS最新動向

コラム

第1回「IFRS適用のロードマップ及びコンバージェンスについて」
我が国のIFRS適用のロードマップ

2009年6月30日、金融庁企業会計審議会企画調整部会より、我が国のIFRS(国際財務報告基準)のアドプション(採用)に向けた日本版ロードマップと云える「我が国における国際会計基準取り扱いについて(中間報告)」が、2月4日から4月6日までパブリックコメントに付された中間報告案を経た上で公表されました。

前年11月に米国がロードマップを公開したことに次いで、日本がこれに続いたことになりますが、米国と我が国がIFRS適用することによって、実質的に会計基準が世界的に統一されることになります。

この表明によって、日本の金融市場の孤立が避けられること、IFRSに対する発言力が高まるなどの効果が期待できるとされていますが、何より大きいことは、日本のIFRS適用の具体的な期間的目標が提示されたことです。その意味では、一連のいわゆるIFRS対応の大きな節目と位置付けられるものです。


「連結先行」ということ

この中間報告の特徴の第一は、「連結先行」の採用です。この連結先行の考え方は、IFRSとのコンバージェンスの加速に向けて、連結財務諸表については情報提供機能の強化及び国際的な比較可能性の向上の観点から、我が国固有の商慣習や取引慣習の混乱をできるだけ軽微なものにするために採用された考え方です。

これは連結財務諸表に適用される会計基準と個別財務諸表に適用されている会計基準との整合性を損なわないよう配慮しつつ、「連結財務諸表は個別財務諸表を基礎として作成されなければならない」という関係を少々緩和し、両者の一時的なズレを容認するものです。

したがって、IFRSの適用に関し、個別財務諸表を対象外にしたものではないことに注意する必要があります。なお、連結対象会社を有さず連結財務諸表を作成していない上場企業については、国際的な比較可能性等の観点から、我が国の会計基準による個別財務諸表に加えて、追加的な情報として監査を受けたIFRSによる個別財務諸表を作成・開示することができるとされています。

IFRSの任意適用

次に中間報告では、強制適用に先立ち、2010年3月期における年度財務諸表からIFRSの任意適用を認め、将来的な強制適用の是非を判断するとともに適用の前提となる課題に着実に取り組むこととしています。

ただ、任意適用を認める企業の範囲については、投資者保護のために、一定の基準ないしは条件を必要としています。その例示として、「継続的に適正な財務諸表が作成・開示されている上場企業であり、かつ、IFRSに基づく、社内の会計処理方法のマニュアル等を定め、有価証券報告書等で開示している企業であって、国際的な財務・事業活動を行っている企業」が挙げられています。

ここで留意しなければならないことは、この任意適用以降、我が国にIFRSと我が国会計基準に基づく財務諸表が併存することになります(いわゆるダブル・スタンダード)。このことによる比較可能性の問題の解消のために、「並行開示」を求めていますが、作成者の負担・コストの観点から、導入初年度のみ並行開示(前年度及び当年度財務諸表各1年分)を求め、以降の年度については、継続的な並行開示に代えて、IFRSと我が国会計基準の重要な差異の注記にとどめていますので、投資者の比較のための組替え等の負担は増えることになりますし、作成者の負担もやはり増加することは避けられません。


IFRSの強制適用の判断時期と適用時期

IFRSの強制適用に関しては、IFRS自体の強化、日本語への翻訳、IASCF(国際会計基準委員会財団)のガバナンスへの関与、IFRSに対する実務の教育・訓練、XBRLの対応など諸課題が十分に進展していることや任意適用企業の状況、そして世界最大の金融資本市場を有する米国の強制適用への判断などを見極め、上場企業の連結財務諸表を対象として、とりあえず2012年を目途に強制適用への最終的な判断を行うとしています。

この2012年に、強制適用を判断した場合には、実務対応上必要な準備期間として、少なくとも3年が必要と考えられ、強制適用の開始時期は2015年または2016年とされています。

なお、強制適用の方法として、一斉適用か規模等の分類による段階適用かの判断は現時点では示されていません。


準備スケジュールに影響の大きいIFRSの初度適用規定

ここで、ぜひ留意しておかなければならないことは、任意適用も、もちろん強制適用も、IFRS1号(国際財務報告基準の初度適用)の規定への対応を求められていることです。このことは、初度適用企業にとって大きな負担となるものであり、IFRS対応スケジュールの立案に影響を及ぼすと考えられます。

IFRSを初度適用する際は、最低でも1年分の比較情報の開示が必要となります。たとえば、2010年3月期からIFRSを初度適用する場合は、2009年3月期の財務情報(財務諸表)を開示する必要があります。つまり、2008年4月1日よりIFRSを適用するということになります。さらに適用企業は、この2008年4月1日(IFRSへの移行日)付けの、「IFRS開始財政状態計算書(貸借対照表)」をIFRSに準拠して作成することになります。

また、IFRS開始財政状態計算書(貸借対照表)及び開示対象財務諸表の作成にあたり、最初のIFRS財務諸表の期末(例示で2010年3月31日)時点で効力が発生しているIFRSを遡及適用しなければなりません。特にIFRS開始財政状態計算書(貸借対照表)の作成では、すべての資産・負債をIFRSに基づいて処理をするために、可能な限り期間を過去にさかのぼって、IFRSを適用することを求めています。

この対応は、企業に大きな負担を強いると考えられるため、一部遡及適用免除することが認められています(企業結合、固定資産のみなし原価、従業員給付、為替換算調整勘定、複合金融商品、子会社、関連会社の資産・負債、金融商品の分類指定、株式報酬、保険契約の遡及処理)。また、IFRS遡及適用を禁止しているものもあります(金融資産・金融負債の認識中止、ヘッジ会計、見積もり、売却目的や廃止事業として分類された資産)。

IFRS導入手順等は、今後のこの稿でその留意点等を述べていきますが、こうしたことを考慮すると、最低でも強制適用年度の2年前には、IFRSによる会計処理を可能にしておかなければならないことになります。そのためのIFRSの理解、IFRSに対応したグループ・ガバナンスや業務プロセスと関連システムの再構築、個々の会計方針の決定と定着などの対応スケジュールは当然、そのことを考慮したものにならなければなりません。


「IFRS対応会議」の設立

金融庁の中間報告の公表に呼応するように、2009年7月3日、財務会計基準機構((FASF)の主導によって、「IFRS対応会議」が設立しました。IFRSの導入にあたって、解決すべき課題がいくつかあります。その多くは民間レベルで主体的に取り組むことが求められています。そのことにより、IFRS導入の具体的な道筋をつけ、有効で効率的な取り組みにより、着実なIFRS適用につなげようということで、日本経団連、日本公認会計士協会、東京証券取引所、大阪証券取引所、日本証券アナリスト協会、そして企業会計基準委員会及び財務会計基機構はこのような課題に取組む体制を構築することに合意し、さらにオブザーバーとして金融庁等の支援をえて、「IFRS対応会議」は発足しました。

このIFRS対応会議及び傘下に設置される各委員会の概要は図表の通りですが(図表1参照)、今後、IFRS対応会議の課題への対応活動成果は、傘下を構成する「広報委員会」などを通じて開示されると思われますので、ホームページ等を注視する必要があります。

※図表1:EU同等性評価26項目に関係した会計基準

 会計基準表題  公表日
 第7号  改正 「事業分離等に関する会計基準」  2008年12月16日
 第8号  ストックオプション等に関する会計基準  2005年12月27日
 第9号  棚卸資産の評価に関する会計基準  2006年07月05日
 第9号  改正 「棚卸資産の評価に関する会計基準」  2008年09月26日
 第10号  改正 「金融商品に関する会計基準」  2008年03月10日
 第15号  工事契約に関する会計基準  2007年12月27日
 第16号  持分法に関する会計基準  2008年03月10日
 第16号  改正 「持分法に関する会計基準」  2008年12月26日
 第18号  資産除去債務に関する会計基準  2008年03月31日
 第19号  「退職給付に係わる会計基準」の一部改正(その3)」  2008年07月31日
 第20号  賃貸不動産の時価等の開示に関する会計基準  2008年11月28日
 第21号  企業結合に関する会計基準  2008年12月26日
 第22号  連結財務諸表に関する会計基準  2008年12月26日
第23号 「研究開発費に関する会計基準」の一部改正 2008年12月26日
今後のコンバージェンス

IFRSの適用をスムースに進めるためには、現在進められている日本基準のIFRSとのコンバージョン(収斂)作業をさらに加速させる必要があります。それは、コンバージェンスは、IFRSのアドプション(採用)へのソフトランディング効果を期待できるからです。

2007年8月、ASBJ(企業会計基準委員会)とIASB(国際会計基準審議会)との間の「会計基準のコンバージェンスの加速化に向けた取り組みへの合意」(東京合意)において、CESR(欧州証券規制当局委員会)から2005年7月に提示された26項目について、短期項目と位置付け、2008年末を目標にコンバージェンスに取り組んだ結果、ほぼ予定通り終了しています。

コンバージェンスが終了するということは、当該項目の会計基準等が改正または新設され、それを我が国の上場企業等が適用するということであり、コンバージェンスの推進は、IFRSのアドプションへのソフトランディング効果が期待できる所以です。(図表2参照)

※図表2:その他包括利益の比較(日本基準:評価換算差額等)

短期項目以外のコンバージェンス・プロジェクト項目は、2011年6月30日迄の適用を目標として、ASBJとIASBで識別されていた日本基準とIFRSとの間の差異のうち、短期目標に含まれない残りの差異を「既存の差異に関連するプロジェクト項目」に区分し、2011年6月30日後の適用を前提にした新たなIASBのプロジェクトの内、IASBとFASB(米国財務会計基準審議会)によるIFRSと米国基準の両基準のコンバージェンスに向けたロードマップに関する覚書(MOU)に関連するプロジェクト項目を「IASB/FASBのMOUに関連するプロジェクト項目」、それ以外のIASBの主要なプロジェクトの差異に係るものとして「IASB/FASBのMOU以外のIASBでの検討に関連するプロジェクト項目」として、それぞれ区分して、プロジェクト計画表として2009年9月に更新され、公表されています(図表3)。

※図表3:プロジェクト計画表 (2009年9月)

<補足>
計画表上の記号の意味は次の通りです
Comment:IASBのDP/EPに対するコメントの検討・作成、 DP:論点整理・検討状況の整理、  ED:公開草案、 Final:会計基準/適用指針等(最終)


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著者プロフィール

加賀屋 純一(かがや じゅんいち)
オフィス・ジェイ・ケイ株式会社 経営・会計研究所 所長

国内コンサルティングファームにて数百社の企業の経営改善・コンサルティングに従事しながら、様々な企業のシステム構築支援や大手メーカーの会計パッケージ開発等を手掛ける。2008年3月までエス・エス・ジェイ株式会社で、マーケティング、技術開発担当の取締役を歴任。SuperStreamの製品開発に深く携わりながら、様々な講演活動や業界紙への寄稿を行い、会計業務の動向を一早く発信するだけでなく、企業経営の見地に立った財務、会計業務のあり方を示唆している。



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