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HOME > コラム『国際会計基準が我が国にやってくる!』~加賀屋純一のIFRS最新動向

コラム

第3回「公正価値(その1)-公正価値とは(公正価値の定義)」
IFRSの重要な特徴としての公正価値

IFRS(国際財務報告基準)は、日本基準との比較において、基本的な差異とも言える重要な特徴がいくつか挙げられます。

包括的な原理原則のみを明確に規定した原則主義(プリンシプル・ベース)に基づく会計基準であること、資産及び負債の各項目について原則時価評価して、資本取引以外による期首と期末の資本の変動差額として把握される包括利益を重視するなど、資産・負債アプローチに立脚した会計基準であること、その他、比較可能性の追求、注記に定性情報、定量情報の要求、などが挙げられます。

そして、重要なもう一点が、より企業の経済的実態を反映するための公正価値の測定または開示を要求する会計基準であることです。IFRSは、資産、負債及び所有者持分金融商品の一部について公正価値で測定することを要求していますが、その要求は多くのIFRSの基準書に亘っています。その要求されている主な基準書を列挙すると以下のものが挙げられます。

IFRS第2号「株式報酬」、IFRS第3号「企業結合」、IFRS第5号「売却目的で保有する非流動資産及び非継続事業」IFRS第7号「金融商品―開示」、IAS第2号「棚卸資産」、IAS第16号「有形固定資産」、IAS第17号「リース」、IAS第18号「収益」、IAS第19号「従業員給付」、IAS第32号「金融商品―表示」、IAS第36号「資産の減損」IAS第38号「無形資産」、IAS第39号「金融商品―認識及び測定」、IAS第40号「投資不動産」等。これらの基準書の理解のためにも、公正価値の理解は不可欠です。


IFRSの公正価値の定義

国際会計基準審議会(IASB)は2009年5月28日に公開草案(ED)「公正価値測定」を公表しました。この中で、公正価値を次のように定義しています。
「測定日において市場参加者間で秩序ある取引が行われた場合に、資産の売却によって受け取るであろう価格又は負債の移転のために支払うであろう価格」

一方、現行のIFRSではIAS第39号「金融商品―認識及び測定」で以下の通り定義しています。
「独立第三者間取引条件において、知識のある自発的な当事者の間で、資産が交換され、又は負債が決済されるであろう金額」

この両者を比較する前に、触れておきたいことは、このIASBの公開草案公表以前、2006年2月に米国財務会計基準審議会(FASB)が財務会計基準書(SFAS)157号「公正価値測定」を公表しており、その中での公正価値の定義は、IASBの公開草案での定義とほとんど同様となっています。つまり、このIASBの公開草案の定義は、FASBの定義をほとんど採用しているといえます。

さて、IASBの公開草案と現行のIFRSを比較します。

まず、現行IFRSの「独立第三者間取引条件において、取引の知識がある自発的な当事者」と公開草案の「市場参加者」は、実体として同義的な表現であるということができます。

 次に、現行IFRSの「資産が交換され、または負債が決済されるであろう金額」とIASB公開草案の「資産の売却によって、受け取るであろう価格又は、負債の移転のために支払うであろう価格」ですが、これは明確に違うと解釈されます。


入口価格と出口価格

結論を云いますと、現行IFRSは公正価値を「入口価格」と「出口価格」の双方を指していますが、公開草案では、「出口価格」のみを公正価値と定義して公表しています。

では、「入口価格」、「出口価格」とはなにかということですが、市場での取引の際のキャッシュの流れで説明すると以下のようになります。

つまり、公正価値を「入口価格」とした場合は、資産の評価の場合は、「入口価格」とされる「取得原価」によって公正価値を測定することになります。公正価値は取得原価を基準とすることになり、価格決定主体は、「市場参加者」ではなく、当該企業本人の見積もりの影響を受けることになります。

一方、公正価値を「出口価格」とした場合の資産の評価の場合は、「資産を売却して受け取る価格」が基準となり、その価格は相手があっての価格となり、その価格は標準的な市場の中で形成されていくことになり、取引事例や公表データ等に基づき測定することになります。


日本基準の公正価値

日本基準での公正価値の定義については、「時価」に置き換えて定義されています。たとえば、企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」の6項では、以下のように定義しています。

「時価とは、公正な評価額をいい、市場において形成されている取引価格、気配又は指標その他の相場(以下「市場価格」という。)に基づく価格を言う。市場価格がない場合には合理的に算定された価格を公正な評価額とする」

また、公認会計士協会「金融商品会計に関する実務指針」47項では以下のように補足しています。
「時価とは公正な評価額であり、取引を実行するために必要な知識を持つ自発的な独立第三者の当事者が取引を行うと想定した場合の取引価格」

この内容を解釈すると、日本基準の中で規定されている公正価値の定義は、現行IFRSの定義と同等と見ることができます。
また、IFRSとのコンバージェンスの一環として、ASBJは2009年8月7日「公正価値測定及びその開示に関する論点の整理」(以下「論点整理」という)を公表し、コメント募集の上(2009年10月5日募集終了)、2010年1月~3月公開草案、7月~9月最終基準の公表することとされています。

この論点整理において、公正価格の定義は、IASBの公開草案、SFASの定義の考え方と同様に出口価格のみを採用する方法での検討を示唆しています。ただし、そのことによって、特定の資産、負債の測定に入口価格を用いることを否定するものではないとしています。

IFRSの公開草案は、2010年4月~7月に最終基準書として公表されることになっていますので、アドプションとしてのIFRS基準書、その後に公表されるコンバージェンスとしての日本基準の公開草案を比較することで、公正価値の測定と開示に関する両者の理解と準備手順の策定の参考とすることが期待できます。
(つづく)


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著者プロフィール

加賀屋 純一(かがや じゅんいち)
オフィス・ジェイ・ケイ株式会社 経営・会計研究所 所長

国内コンサルティングファームにて数百社の企業の経営改善・コンサルティングに従事しながら、様々な企業のシステム構築支援や大手メーカーの会計パッケージ開発等を手掛ける。2008年3月までエス・エス・ジェイ株式会社で、マーケティング、技術開発担当の取締役を歴任。SuperStreamの製品開発に深く携わりながら、様々な講演活動や業界紙への寄稿を行い、会計業務の動向を一早く発信するだけでなく、企業経営の見地に立った財務、会計業務のあり方を示唆している。



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