公正価値を、資産、負債そして持分金融商品に適用する際に、前提として、決定しておかなければならないことがあるとしています。(ただ、現行のIFRSについてこの規定はなく、前号で紹介した2009年5月公表のIASBのED(公開草案)「公正価値測定」に規定しています。)
公正価値の測定を資産に適用する場合、まず、非金融資産の公正価値は、資産の使用価値を最大化させるような利用方法を前提として決定されます(「最有効使用」)。つまり、企業は市場参加者の立場で、どのように当該資産を使用するかを想定しなければなりません。しかし、資産の現在の使用が最有効使用でないことを示す証拠が存在しない場合には他の使用方法を調査する必要はないと規定しています。
また、企業は、資産の最有効利用を踏まえて、公正価値測定のための「評価の前提」を決めなければなりません。これは資産の評価を使用価値で行うか(「使用の評価前提」)、交換価値でおこなうか(「交換の評価前提」)を決定するということです。
「使用の評価前提」は、非金融資産のように、他の資産や負債と組み合わされ、グループとしての使用が最有効使用である場合に用いられる前提です。この場合の資産の公正価値は、当該資産及び相互補完的な資産及び負債がグループとして使用され、そして、市場参加者が入手可能であると仮定し、当該資産を売却する現在の取引において受取るであろう価格を基礎として決定されなければならないと規定しています。
また、「交換の評価前提」は、資産が基本的に単独で、市場参加者に最大限の価値を提供する場合に用いられる前提です。この場合の資産の公正価値は、単独で当該資産を運用する市場参加者に資産を売却する現在の取引において受取るであろう価格となります。なお、金融資産の公正価値を測定するときは、この交換の評価前提を用います。
以上のように、公正価値を資産に適用する場合は、「最有効使用」、つまり、市場参加者は、当該資産の使用価値を最大化させるような使用方法を用いているという前提と、「評価の前提」、つまり、資産を使用価値で評価するか、交換価値で評価するかを前提として、決めなければならないということです。
次に、公正価値の測定を負債に適用する場合は、負債が測定日に市場参加者に移転(譲渡)されると仮定します。ここで注意しなければならないことは、負債が債権者である相手方と決済されることや消滅することではなく、負債そのものは継続していて、負債の譲受人(市場参加者)が負債の履行を引受けるということを仮定しています。
なお、負債移転に関する観察可能な市場価格が存在するのであれば、その価格を採用することになりますが、多くの場合存在しません。その場合は、相手方が対応する資産の公正価値を測定するために用いるであろう方法と同じ方法を用いて、公正価値の測定をしなければなりません。
逆に、負債に対応する資産が存在しない場合は、現在価値技法またはその他の評価技法を用いて、市場参加者がその負債を引受けるための価格を見積もらなければなりません。この中で、現在価値技法を採用する場合は、市場参加者が当該義務を履行する際に負担する将来のキャッシュ・アウトフローを見積もらなければなりません。
また、負債の公正価値の測定に当って、企業が債務を履行しないリスクである不履行リスク(信用リスク含む)が反映します。また、商品またはサービスを引き渡す債務(非金融債務)をも考慮しなければならないとしています。
測定日において秩序ある取引が市場参加者間で行われるであろう価格を見積もることを目的に、EDでは、マーケット・アプローチ、インカム・アプローチ、コスト・アプローチを公正価値の測定技法として挙げています。
マーケット(市場)・アプローチは、同一または比較可能な資産・負債に関連する市場取引によって持たされる価格やその他の情報を基に公正価値を算定する技法です。
インカム(収益)・アプローチは、将来の金額(キャッシュ・フローや収益・費用)を単一の現在割引価値に変換することによって、公正価値を算出する技法です。
そして、コスト(原価)・アプローチは、現時点で資産のサービス能力を同等物に置き換えるために必要な金額(現在再調達原価)を基に公正価値を算出する技法です。
企業はこれらの評価技法を、同じ資産または負債の観察可能な現在の市場取引の価格で定期的に調整しなければなりません。そして、評価技法又はその適用の変更により生じる調整は、IAS第8号「会計方針、会計上の見積もりの変更及び誤謬」に従って「会計上の見積もりの変更」として会計処理しなければならないとしています。
また、EDでは、これらの公正価値の評価技法に用いられる「インプット」と、それらによって算定された公正価値を3つのレベルに階層化(ヒエラルキー)しています。
「インプット」とは、市場参加者が資産又は負債をプライシング(値付け)する際に用いる仮定を幅広く指すとしており、そのインプットに、使用すべき優先順位をレベル1からレベル3の3階層に分類し、その順位で使用しなければならないとする公正価値ヒエラルキー(公正価値も3階層化)を定めています。(図表参照)
当然のことながら、公正価値の階層は開示に影響することになります。なお、公正価値のヒエラルキーの開示は、現行IFRSでは金融商品のみですが、EDでは非金融商品についても開示が求められています。
EDでは開示情報として、資産・負債ごとに以下の事項を開示しなければならないとしています。
以上のように、EDでは現行IFRSでの測定対象が、広がったこととともに、公正価値を測定する方法が明示されました。このことに伴い、企業は本稿で記述した各事項(評価の前提、評価技法、インプットと公正価値ヒエラルキー等々)の調査と検討のための機能の整備と再構築を考えなければならない可能性があります。
(次回「概念フレームワーク」ということ)
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国内コンサルティングファームにて数百社の企業の経営改善・コンサルティングに従事しながら、様々な企業のシステム構築支援や大手メーカーの会計パッケージ開発等を手掛ける。2008年3月までエス・エス・ジェイ株式会社で、マーケティング、技術開発担当の取締役を歴任。SuperStreamの製品開発に深く携わりながら、様々な講演活動や業界紙への寄稿を行い、会計業務の動向を一早く発信するだけでなく、企業経営の見地に立った財務、会計業務のあり方を示唆している。

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